六車ガレージの朝。
電話が鳴り止まない。
来店予約も増加。
SNSや口コミで評判が広がり、
車検・整備・カスタム依頼が急増している。

整子さん、ナビとETC取付作業のご依頼が入りました。
本日夕方までの納車希望とのことですが、ご対応をお願いできますでしょうか?

わかったわ。
夕方までに間に合うよう、急いで作業するわ!

検子さん、以前車検でお預かりしたお車ですが、
本日夕方までの納車予定となっております。
現在の状況で、間に合いそうでしょうか?

今整子が点検整備をしているところよ。
作業が終わり次第、すぐ検査ラインに入れるわ。

それでは検子さんは車検整備が行われている間にナビとETCの取付作業をお願いいたします。
検査員は法令上、車検整備を行えないと聞いておりますので、車検整備のほうは整子さんにお願いできますでしょうか。

わ、わかったわ。
やってみるわ…
なぜ検査員は車検整備をできないの?
検査員の役割は、
車が保安基準に適合しているかを“公平に確認すること”です。
一方、車検整備は部品交換や修理を行う仕事です。
もし、自分で整備した車を自分で合格判定できてしまうと、検査の公平性が保てなくなる可能性があります。
そのため、
- 整備する人
- 検査する人
を分けることで、車検制度の信頼性と安全性を守っているのです。
※ただし、車検整備とは別に、ナビ・ETC・エアロパーツなどの部品取付作業は行うことができます。


ちょっとアンタ!
ナビの取付けに何時間かかってるのよ!
こっちはもう車検整備が終わりそうなの!
このままだと夕方の納車時間に間に合わなくなるわよ!

ご、ごめんなさい💦
配線が多すぎて訳がわからなくなっちゃった…

クッ、検子さんがここまで作業が苦手とは…


整子!この車ヘッドライトが切れてるじゃない!
これじゃあ検査ができないよ。

しまった、あとで交換しようとして忘れてた!

バルブなら私が交換しても法令には抵触しないし、これぐらいなら私でもできるから交換しておくね。

ここ最近整子さんのミスも目立つな…
やはり負担が大きいのか。


ここ最近売り上げが伸びつつある…
だが、現場を支えている二人の負担があまりにも大きい。
整子さんは作業に追われ、
検子さんは検査と事務処理に追われている。
どちらか一人でも欠ければ、この店はすぐに回らなくなるだろう。
この会社は、圧倒的に人手が足りない…。
まずはそこを解消しなければ、
未来はない。
翌日、社長室では…

社長、少しお時間よろしいでしょうか?

どうした?

私が六車ガレージに勤めて、早三か月――。
六車ガレージの売り上げは確実に伸びてきています。
しかしその一方で、現場の負担も日に日に増加していました。
もし、この忙しさの中で整子さんが整備ミスを起こし、重大な事故に繋がるようなことがあれば……。
それでは、お客様から積み上げてきた信頼も、すべて失ってしまいます。

検子さんにも、少し問題があります。
法令や保安基準に関する知識、そして検査員としての判断力は非常に優秀です。
検査員という立場上、車検整備が行えず、整備技術を磨く機会が限られることも理解しています。
しかし、ナビやETCなどの用品取付作業にも苦戦しており、その負担が整子さんへ集中していました。
六車ガレージは成長しています。ですが、その成長に対して人手が足りていない――
私は営業として、この状況に危機感を抱いていました。

あぁ……。
これまで現場は、実質あの二人に任せきりだったからな。
それぞれの得意分野を伸ばし、自信を付けさせることを優先してきた。
だが、店の成長に対して人手が追いつかなくなってきているのも事実だ。

社長、もう悠長なことを言っている場合ではありません。
従業員のスキル向上はもちろんですが、
今後のことを考えるなら、新しい人材を雇うことも本格的に検討すべきです!
このままでは、現場が限界を迎えてしまいます。

大口、確かにお前が来てから、六車ガレージの売り上げは大きく伸びた。
その点については、本当に感謝している。
だがな――
私は、お前にあの二人のマネジメントも任せたいと言ったはずだ。
多くの案件を取ってくるお前の営業力は確かに優秀だ。
しかし、あの二人のキャパシティを超える仕事量を抱えさせてしまっては、
本末転倒だ。
現場が壊れてしまえば、店の信用も長くは続かんぞ。

……私のやり方が、間違っていたのかもしれません。
売り上げを伸ばしたい一心で、現場の限界も考えず、
ただ闇雲に案件を取っていました。
検子さんや整子さんの負担のことも、ちゃんと見えていなかった……。
今回の件は、私の責任です。

いや――。
この厳しい状況を乗り越えたことで、お前たち三人は、それぞれ大きく成長できたんじゃないか?
自分の弱点を知ることこそ、何よりの成長材料だ。
検子は整備技術の課題を知った。
整子は一人で抱え込みすぎる危うさを知った。
そして大口、お前は“売り上げだけでは現場は回らない”ということを学んだはずだ。
今回の経験は、決して無駄じゃない。

……確かに、その通りかもしれません。
私は、売り上げを伸ばすことばかり考えていました。
ですが、本当に店を成長させるというのは、従業員一人ひとりが無理なく力を発揮できる環境を作ることでもあるのですね。

確かに、大口の言う通り、人手不足は大きな課題だ。
だがな、今の自動車業界はどこも人材確保に苦労している。
新人を雇ったとしても、育てるには時間も労力もかかる。
それに今の六車ガレージには、すぐに人を増やせるほどの余裕はない。
まずは、お前たち三人が互いに足りない部分を補い合い、現場を支えられる体制を作ることが先だ。
それができなければ、新人が入ってきたところで、面倒を見る余裕など到底ないだろう。

……わかりました。
確かに、今の六車ガレージには
“人を増やせば解決する”
ほど単純な問題ではないのでしょう。
ですが私は、この店はもっと大きくなれると本気で思っています。
そのためにも、いずれは新人を迎え入れられる体制を作らなければなりません。
営業として売り上げを伸ばすだけではなく、
“人を育てられる環境”を作ること――。
それも、これからの私の役目だと考えています。

期待しているぞ、大口。
新人の件については、こちらでも前向きに検討しておこう。
一方整備工場では…

検子、ごめん。
昨日は少し言い過ぎたわ。
アンタ、普段は検査業務や保安基準の説明でずっと動き回ってるものね。
ナビの取付作業なんて、ほとんど経験がなかったでしょ。
それなのに、焦らせるような言い方をして悪かったわ。

いや、私も勉強不足で、みんなに迷惑をかけちゃったわね。
整子、今度時間があるときでいいから、ナビとか電装品の取付方法を教えてくれないかしら?
私も、もっと現場で役に立てるようになりたいの。

いいわよ、その代わり今度飲みにいくときは奢ってちょーだいね。



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