
ねぇ整子!
この前、エンジン壊れちゃったお客さんいたでしょ?
あれから何か連絡あったの?
クレームとか、大丈夫だった?

えぇ。
私、ちゃんと説明したもの。
オイル管理もしない、警告も無視する。
それで壊れたあとに文句を言われても、お門違いよ。
整備って、“壊れてから”じゃ遅いの。
だから私は、必要なことはハッキリ伝えるわ。

そっかー、車検に通ったあとでかわいそうだったけど、
故障したタイミングが悪かったわねー

それよりアンタ!
あんな状態の車に保適を切るなんて、私には理解できないわ。
確かに、その瞬間は基準に適合していたのかもしれない。
でも、オイル管理は最悪、消耗品も限界、バッテリーも弱っていたじゃない。
それで「車検に合格したから問題ありません」なんて、信じらんない!
『保適』⇒『保安基準適合証』とは
その車が保安基準に適合していることを、一時的に証明する書類

え!
だって私が検査した時は保安基準に
不適合になるような箇所はなかったわ!

ちょっと信じられないんだけど…。
エンジンオイル、2万kmも交換されてなかったのよ!?
普通、そんな状態で“はい合格です”って安心して乗せると思う?
それにバッテリーだって、かなり劣化してたの。
今は動いてても、ある日突然エンジンがかからなくなるなんて、
容易に想像できるでしょ?
車検は“その瞬間の基準”を見るもの。
でも整備は、“これから先も安全に走れるか”を見るものなのよ。
だから私は、通すだけの車検は嫌い。
後で困るのは、結局ユーザーなんだから。

結論から言うとね!
エンジンオイル未交換や、弱ったバッテリーだけを理由に、車検不適合にはできないの。
検査時点で始動性に問題がなく、保安基準に適合していれば、
“将来壊れそう”って理由だけでは落とせないわ。
車検は、“今この瞬間、保安基準に適合しているか”を確認するもの。
だから私は、“危なそうだからダメ”じゃなくて、
法令と基準に基づいて判断することを大切にしているの!

私は“ただ通すだけ”の車検なんて、本当の意味でユーザーの
ためだとは思ってないわ。
確かに、法令に抵触していなければ検査は合格になる。
でもね、それで終わりじゃないのよ。
エンジンオイルやバッテリーが劣化しているなら注意を促す。。
タイヤが減っているなら早めの交換をすすめる。
だって、車検に通った翌日にトラブルが起きたら意味ないでしょ?

『そのうち壊れそう』『危なそうだから』
そういう推測だけで判断し始めたら、検査の公平性がなくなってしまうもの。
もちろん、整備の大切さを否定しているわけじゃないの。
でも、“整備が必要”と“車検に通らない”はイコールじゃない。
だから私は、感覚ではなく、法令と基準に基づいて判断する。
それが検査員として大切な姿勢だと思っているわ!

何を騒いでいる?

あ、社長!

ちょうどいい!
私とアンタの考え、どっちがボスよりか聞いてみましょうよ!

社長
何の話だ?

検子は車検に通れば車がどんな状態だろうと問題ないというのよ。
車検に通れば必要な消耗品の交換や整備はいらないと言っているの。

確かに車検後も問題なく車に乗れるように予防整備は必要だと思うけど、
そんなの車の持ち主の責任で適切に整備していけばいいだけの話じゃないの?

社長
お前たちの言うことは一理ある。
整子の言う通り、車検後に使用者が安心して乗れるように必要なメンテナンスをすすめるのは使用者のためであり我々整備工場の利益にも繋がる。

ほーら、私の言うことの方が正しいじゃない。

社長
いや、検子の言うことも間違ってはいないのだ。
それぞれ事情があり我々が示す整備内容が
そのユーザーにとって正解か否かはそのユーザーに委ねられるのだ。

それって一体…

社長
ユーザーそれぞれのニーズに応えることだ。
検査と整備は密接に関係しているが、
似ているようで本質は異なる。
車検後も安全に乗りたいのか、
とりあえずその場しのぎで車検に受かればいいのか、
客の要望に応えるのもプロとしての務めだ。

私はね、検査をする以上、ちゃんと根拠を持って判断したいの。
根拠のないことで不適合にはしたくないわ。

車検に通ったからって安心しきるのは危険よ。
安全に乗りたいなら、定期的にプロの目で点検することね。
整備不良で事故なんて起こしたら、全部台無しでしょ。

社長
自動車の世界で検査と整備は表裏一体…
客は最低限検査に受かる必要最低限の対応を求める者もいれば、
安全に長く乗りたいと思う者もいるのだ。


整子、お前は整備のプロとして、
ユーザーに“本当に必要な整備”を正しく伝えろ。
不具合を見つけたなら、なぜ必要なのか、
放置するとどうなるのかまで説明するんだ。
だがな――
どこまで整備を行うかを決めるのは、最終的にはユーザー本人だ。

そして検子。
お前は検査員として、
その車が保安基準を満たしているかを冷静に判断しろ。
感情で通すな。根拠なく落とすな。
基準に適合しているか、それだけを見極めればいい。

必要最低限の整備で維持するのも、
ユーザーの事情を考えたひとつの選択だ。
整備は“安心”を支える仕事。
検査は“基準”を守る仕事。
似ているようで、役割は違う。
だからこそ、お前たち二人が必要なんだ。

それもそうね。
私はこれまでどおり、
必要な整備はしっかり説明してすすめるわ。
でも、最終的に決めるのはユーザー自身。
断られた場合は、その状態で保安基準を満たしているか、
検子、アンタに確認させてもらうわ。

ええ、それでいいと思うわ。
整備が必要かどうかと、
保安基準に適合しているかは別の話だからね。
整子は“安全に長く乗るため”の提案をする。
私は“今、この状態で基準を満たしているか”を判断する。
ユーザーに必要以上の負担をかけないのも大事なことよ。
だから私は、根拠に基づいて冷静に判断するわ。

それでいい。
整備も検査も、どちらか片方だけじゃ成り立たない。
安全を守る整子と、基準を守る検子――
お前たちは、それぞれの立場でユーザーを支えればいい。
六車ガレージは、
“ただ通すだけ”でも、“必要以上に不安を煽る”場所でもない。
ユーザーに正しく伝え、正しく判断する。
それが俺たちの仕事だ。

……まあ、なんだ。
難しい話はそのへんにして、
とりあえずオイル交換だけはサボるな。
エンジン焼き付いたら、整子は説教、検子は真顔、
そして請求書を見たユーザーは絶叫だからな。
ここでのポイント
- 検査と整備は似ているようで役割が違う
- 必要な整備を説明するのも大切な仕事
- 保安基準に適合しているかは冷静に判断することが重要
- とりあえずオイル交換だけはサボらないこと


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