六車ガレージでは、整子が手際よく点検整備を行い、その仕上がった車を検子が検査ラインへ通していく。
いつもと変わらない、スムーズな流れ――
そのはずだった。

検子、整備が終わったから
この軽トラック検査してくんない?

わかったわ。
アレ、けどこの軽トラック、
タイヤが少しフェンダーから
はみ出しているわね。

アンタ検査員のクセに知らないの?
タイヤは1cmまでならはみ出しても
問題ないのよ。

それは乗用車だけの話よ。
貨物車である軽トラックに
その規定は通用しないわよ。

ウソッ!
そんなことどこに書いてあるのよ!?

保安基準細目告示第2節第100条に書いてあるわ!
条文だとややこしいから審査事務規程の
7-28「車枠及び車体」の項目を見てみて!
「保安基準」とは?
国が定めた、
「この基準を満たしていない車は道路を走ってはいけません」
というルールです。
車検は、この保安基準に適合しているかを確認しています。
「審査事務規程」とは?
自動車の検査・登録・構造変更などを行う際に、実際の審査をどう行うかを定めた実務ルール集です。
審査事務規程とは、自動車が保安基準に適合しているかを確認するために用いられる、
「車検現場の実務マニュアル」です。
7-28 車枠及び車体
7-28-1(3)
① 自動車が直進姿勢をとった場合において、車軸中心を含む鉛直面と車軸中心を通りそれぞれ前方 30°及び後方50°に交わる 2 平面によりはさまれる走行装置の回転部分(タイヤ、ホイール・ステップ、ホイール・キャップ等)が当該部分の直上の車体(フェンダ等)より車両の外側方向に突出していないもの。この場合において、専ら乗用の用に供する自動車(乗車定員10人以上の自動車、二輪自動車、側車付二輪自動車、三輪自動車及び被牽引自動車を除く。)であって、車軸中心を含む鉛直面と車軸中心を通りそれぞれ前方30°及び後方50°に交わる2平面によりはさまれる範囲の最外側がタイヤとなる部分については、外側方向への突出量が10mm未満の場合には「外側方向に突出していないもの」とみなす。

ホントだ…
審査事務規程7-28-1(3)①ってとこに
乗用車だけ突出量が1cm以内の場合には
外側方向に突出していないものとみなすって
書いてあるわ。

正確には、
「10mm未満」だよ。

アンタ細かいわね!
それよりお客さんにこのままで
車検通るって言っちゃったわ、どうしよう。

さすがにこの状態で
車検適合にはできないわ。
タイヤが突出していなければ
いいんだけど…

例えば、タイヤがはみ出さないように
オーバーフェンダーを取付ける
ってのはどう?

オーバーフェンダーを取付けて車体の一部にするってこと?
取付け方法によってはダメとは言えないわね。

これでどうかしら?
文句ないでしょ?


このオーバーフェンダーは車体の一部ってことよね?
取付け方法は?
車枠及び車体の基本要件
車枠及び車体の強度、取付方法等に関し、保安基準第18条第1項第1号の告示で定める基準は、次の各号に掲げる基準とする。
一 車枠及び車体は、堅ろうで運行に十分耐えるものであること。
二 車体は、車枠に確実に取り付けられ、振動、衝撃等によりゆるみを生じないようになっていること。
三 車枠及び車体は、著しく損傷していないこと。

ただの粘着テープじゃダメなんでしょ?
ちゃんと、自動車部品の取付け用として販売されている
強力な両面テープを使って固定したのよ!
だから、
アンタがよく言う『不適切な補修』にも
該当しないんじゃないの?
不適切な補修事例(審査事務規程から抜粋)
装置又は部品の取付けは、
粘着テープ類、ロープ類、針金類、挟込み又は差込みによる取付け等、工具を用いずに容易に取外すことのできる方法による取付けはNGとされています。
また、回転部分附近の車体(フェンダー等)にベルト類、ホース類、粘着テープ類(自動車用部品の取付けを目的として設計・製作され、当該目的のために貼付されたものを除く。)、紙類、布類、段ボール類、スポンジ類又は発泡スチロールが取付けられているもの

“強力だから適合”ってわけじゃないのよ。
でも、この取付方法なら、
少なくとも“不適切補修”には該当しない
って判断はできるわ。
ところで――
このオーバーフェンダーって、
片側何cm設計なの?

確か、部品の説明書には
『片側1cm』って書いてあったはずよ。

わかったわ!
実際に測って確認してみるわ!


測ってみたわ!
結論から言うわね――
全幅は149cmだったから、
軽微変更の範囲内ね。
かなりギリギリだけど、
今回はOKよ!

やったー!
でも、どうして149cmで
“ギリギリOK”になるの?

この軽トラックって、
車検証に記載されている全幅は147cmなんだけど…
そして、このオーバーフェンダーは“指定外部品”だから、
一定条件を満たせば、全幅は±2cmまでなら
軽微変更として許容されるのよ。

“指定外部品”ねぇ…。
何回か聞いたことはあるんだけど、
正直、全然覚えられないのよね~。

整子は車の整備には詳しいけど、
検査や保安基準の話になると、からっきしね(笑)
いいわ!
せっかくだから、分かりやすく解説してあげる!

…オマエは
整備がからっきしじゃねえか💢


上の表にも書いてあるとおり、
固定的取付で、全幅の増加が±2cm以内なら、
基本的には軽微変更として車検に通る可能性があるわ。
ただし――
“取付けていれば何でもOK”ってわけじゃないの。
灯火器やタイヤのはみ出し、外部突起みたいに、
関係する保安基準へ適合していることが大前提よ

ふーん。
幅については±2cmまでならOKなのね。
……ってことは、
高さにも似たような基準があるってこと?
表を見ると高さは4cmまでってなってるけど、
例えば、ルーフキャリアを天井に取付けると、
4cm以上高くなることもあるじゃない?
ああいうのって、
車検には通らないの?

ルーフキャリアやラダーっていうのは、
『指定部品』って呼ばれる、
国が一定の使用を想定している自動車部品なの。
だから、一定範囲を超える寸法変更があっても、
車検時に取り外さなくていい場合があるのよ。
逆に、さっき話していた『指定外部品』っていうのは、
その“指定部品以外の部品”のことを指すの。
そして、オーバーフェンダーは
この“指定部品”には含まれていないのよ。
指定部品と指定外部品の違いとは?
指定部品とは
指定部品とは、国が定める「比較的安全性への影響が少ない部品」のことです。
一定範囲内の寸法・重量変更であれば、構造等変更検査が不要となる場合があります。
よくある指定部品の例
- ルーフラック
- コイルスプリング、ショックアブソーバー
- タイヤ、アルミホイール
- エアロパーツ
- 一部の灯火器類 など
指定外部品とは
指定外部品とは、指定部品として定められていない部品のことです。
寸法や構造に変更が生じる場合は、構造等変更検査が必要になる可能性があります。
よくある指定外部品の例
- オーバーフェンダー
- 幌
- リーフスプリング、シャックル
- ローダウンブロックまたはハイトアップブロック

なるほど!
指定部品だと一定範囲を超えていてもいいのね!

一定範囲を超えてもいいけど、
保安基準に適合していることが
大前提よ!
尖っていたり、
服を引っ掛けてしまうものはNGよ!

そういや整子、
お客さんにはオーバーフェンダーを取付けて
車検を通すって言ったの?

…(汗)

...(怒)
今回のポイント
- タイヤは車体(フェンダー部)から突出してはならない
- 乗車定員10人以下の乗用車であれば、タイヤ部分のみ10mm未満の突出であればOK
- オーバーフェンダー(指定外部品)でも全幅2cm以内であればOK
- お客様の車に勝手にオーバーフェンダーを取付けるのはNG
注意事項
本記事は、保安基準・審査事務規程等を基にした解説記事であり、内容は執筆時点での見解を含みます。
実際の車検では、
- 車両状態
- 取付方法
- 地域運用
- 検査時の状態
などによって判断が異なる場合があります。
改造や部品取付けを行う際は、事前にディーラー・整備工場・ショップ等へご確認ください。



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